シーズン2
第20話「女神のキス」KISS OF THE MUSE
休暇を終え戻ってきたハンクとカフェで待ち合わせをしたニック。話していると近くから銃声が聞こえる。ニックが音のした本屋に駆け込むと、本屋の小さなステージで男性が血を流し倒れており、店の奥では嫌がる女性を無理やり連れ去ろうとする魔物の姿があった。
イーザーペッシュ
“輝く”と“漁師”の造語でアザラシ型のヴェッセン。変身すると全身が茶色の体毛に覆われ、鼻の下には長い髭が生える。泳ぎが得意で高い所から飛び込むこともできるし、流れのある川でも泳いでいける。
ムーザイ
ムーサはギリシャ神話の文芸を司る女神たちで、ムーザイはその女神に似たヴェッセン。頭髪は赤、エルフのように尖った耳、青緑色の皮膚、虹彩は変身時には青く光る。ムーザイには触れた異性を自分に溺れさせる能力があり、特異な強迫的願望を愛と錯覚させる。ムーザイは唇から抗精神剤のようなものを分泌し、彼女とのキスは男性にとって麻薬、陶酔と中毒をもたらすため、男性は正気を失い破滅に陥る。それはヴェッセンや人間だけに限らず、グリムにとっても同様に影響する。中和剤は存在せず、いったんムーザイとの関係が成立してしまうと他に打つ手はない。1888年のグリムの記述によれば有名なゴーギャンとゴッホの争いはムーザイの娼婦が元凶らしく、「ある娼婦にゴッホが溺れ、彼女は素晴らしい想像の源であったが、ゴッホが影響力を受けて正気を失い耳を切り落とした、ゴーギャンはそのムーザイの首を切り落とした」と書き残されている。
「オデュッセイア」『どうか 女神ムーサよ ご随意に語ってください』
パルナッソス山に住むとされる女神ムーサは英語・フランス語のミューズとしても知られる。「オデュッセイア」は詩人ホメーロスの作として伝承された古代ギリシャの長編叙事詩で、その第1歌に『ムーサへの祈り』が入る。この祈りのあと、イタケーの王・英雄オデュッセウスがカリュプソーの島に囚われているところから物語がはじまり、トロイア戦争の勝利の後に凱旋する途中起きた10年間の漂泊の物語、オデュッセウスの息子テーレマコスが父を探す探索の旅、オデュッセウス不在中に妃のペネロペに求婚した男たちに対する報復などが第24歌まで語られていく。