シーズン1

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オレゴン州の深い森に囲まれた街ポートランド。主人公の殺人課刑事ニックは、ある日突然、日常生活の中で普通の人々の顔が瞬間的におそろしいモンスターに変貌するヴィジョンを見るようになる。実はニックは「グリム童話」の作者として知られるグリム兄弟の末裔で、彼らが書き残していた物語は実在する魔物たちとの闘いの記録だったのだ。ニックは魔物たちの正体を見抜くことができる能力を生かしながら、相棒ハンクと共に奇怪な事件の数々を解決していく—。

米NBCで2011年10月28日に放送がスタートした「GRIMM/グリム」は、近年新番組の生き残りがますます厳しくヒット作が生まれにくくなっている米TV界において、放送開始から早々にフルシーズン(全22話)の放送が決定。その後、回を重ねるごとに調子を上げてNBCの看板番組のひとつに成長し、シーズン2も一貫して安定した人気を誇っている。

基本的には1話完結の犯罪捜査ドラマの体裁を取りながら、近年人気のダーク・ファンタジーの要素も色濃いユニークな作風が本作の魅力だ。タイトルにもある通り、ドラマには毎回グリム童話をはじめとする世界各地に伝わるさまざまな伝説や伝承物語がモチーフとして組み込まれている。第1話の「赤ずきん」から「ハーメルンの笛吹き男」、「ヘンゼルとグレーテル」からディズニー映画でもおなじみの「ラプンツェル」など、実に巧みに童話の中の登場人物や設定が姿形を変えて現代によみがえる。かつて日本でも流行した「本当は怖いグリム童話」などにもあるように、本来この手の伝承物語には暗く残酷な陰の要素が多く含まれており、本作ではその暗黒部分にフォーカスした文学的かつダーク・ファンタジーの要素が若者だけでなく大人の興味を大いにかき立てる。製作は、「バフィ~恋する十字架~」や「エンジェル」のデヴィッド・グリーンウォルト。ハリウッドで活躍する特殊メイクアップのアーティストが集結し、本作の大きな見どころの一つであるホラー的な世界観を見応えのあるものにしている。

また、エピソードが進むに連れて主人公ニックの生い立ちの秘密やグリムと魔物たちがたどってきた複雑な歴史などが明らかとなり、ミステリーの要素とニックをめぐる人間ドラマの要素が複雑に絡み合っていく。さらにグリム兄弟のルーツであるドイツをはじめフランス、日本…と予想外の広がりを見せる「GRIMM/グリム」は、物語性と視覚的な面白さのバランスの優れた出色のエンターテインメントだ。